〝自分の気持ち〟と〝親の期待〟の間で揺れながらも
自らの殻を破り続けることで掴んだ〝看護師〟という夢

坂本沙也加さん(23)
 職業:看護師
出身地:函館
現住所:東京
 函館→東京

 
 
幼稚園から中学校まで附属に通い、本人曰く「ガチガチの型の中で育った」という坂本沙也加さん。高校進学を機に〝自由〟を強く意識するようになり、親の期待と自分の希望の間で激しく揺れ動いたといいます。そんな彼女が選んだのは、幼少期からの夢に突き進むという道でした。浪人してまで大学進学にこだわり、今は東京の病院で念願だった看護師として活躍する坂本さん。函館に対する愛を胸に秘めつつ、今は海外で働くという目標に向かって邁進する彼女に、青春時代の〝苦悩〟と、それを乗り越えたからこそ得られた〝自由〟について語っていただきました。

 
取材・文章:阿部 光平、撮影:馬場 雄介、イラスト:阿部 麻美 公開日:2015年9月4日

 
 

 
 
 
 
 

離れたからこそ感じる函館の良いところと嫌なところ

 
━━札幌から大学進学で東京へ。街の規模も、自分が置かれている立場も大きく変わったかと思いますが、東京での生活はいかがでしたか?
坂本:〝楽〟でした。全部自分で決めていいんだって。
 
━━苦労したことや、寂しかったことはありましたか?
坂本:予備校に通い始めた最初の3ヶ月は、函館から誰も友達が来てなかったこともあって、ほぼ毎日泣いてましたが、東京に来た頃には一人暮らしにも慣れてきていたので大丈夫でしたね。あ、住んでたのは横浜の方でしたけど(笑)。
 
━━横浜といえば、港町ということでは函館とも共通点があるかと思いますが、街の印象はどうでした?
坂本:すごく綺麗で「テレビで見た景色だ!」って感じでした(笑)。私が住んでいたのは横浜でも外れの方だったんですけど、商店街とかもあって、あまり都会都会しすぎてないところが馴染みやすかったです。遊ぶときは横浜まで出て行く感じでしたね。
 
━━看護大学というと忙しかったり、堅苦しいようなイメージがありますが、サークル活動などもあるんですか?
坂本:はい。大学でも男子バスケ部のマネージャーをやってました(笑)。マネージャー歴が6年もあったので、けっこう重宝されましたね。学校も充実してましたし、自分が変わった4年間だったと思います。
 
━━今までのお話だと高校生活が大きな転機だったのかなという印象なんですが、大学で自分が変わったと思うのはどういったところですか?
坂本:自信がついたところだと思います。今までは何をやるにしても自信がなくて、マネージャーいう部分だけでは褒められることもあったので、そこだけは少し自信もありましたけど。自分がどういう人間なのかを、初めてしっかり考えることができた4年間で、いろんなことに自信が持てるようになりました。
 
━━大学を卒業したのが今年の3月で、4月からは念願だった看護師としての生活が始まったわけですね。まだ社会人生活は始まったばかりですけど、函館にはどれくらいの頻度で帰っていますか?
坂本:年に1、2回くらいですね。この前、6月に早めの夏休みをもらって、2日くらい帰省しました。
 
━━自分が離れてからの函館はどんなふうに見えてますか?
坂本:最近、函館がんばってるなって思います!
 
━━僕の周りでも、最近そういう話よく聞くんですが、どんなところに頑張りを感じるのでしょう?
坂本:なんか、おしゃれなスポットが増えてません? ラッキーピエロじゃない素敵なハンバーガー屋さんができたり(笑)。函館に帰ると、新しくできたお店が多いなって感じます。あとは、高校の同級生で函館新聞の記者をやっている男の子がいるんですけど、帰った時に久しぶりに会ったら「今すごく函館頑張ってんだよ!」って話してました。
函館アリーナができて、 GLAY がライブしたってニュースを全国放送の番組で見たのも嬉しかったですね。
 

 
━━やっぱりニュースとかで「函館」って言葉が聞こえてくると、体が自然に反応しますよね(笑)。そんな函館について、あの街にはあるけれど、東京にはないなと感じるモノやコトはありますか?
坂本:人の温かさですかね。東京の人は、他人に対して無関心だなって思います。この前、函館でバスに乗ったんですけど、赤ちゃんを抱っこしたお母さんが乗ってきた時、私も含めて乗客みんながそっちに目を向けて、おじさんが笑わせてたり、おばさんが「何ヶ月なの?」って話しかけたりしてたんですよ。極端な例かもしれないですけど、東京だとそういう光景には出会わないですよね。
 
━━無関心な人が多い東京に対しては、ネガティブな印象を持っていますか?
坂本:最初はすごく嫌だったんですけど、それにすら慣れてきてる自分もいます。初めて横浜に来た時とかはビックリして、悲しい気分になりましたが、最近は無関心になる人の気持ちもわからなくはないなぁと思っています。
 
━━と、いいますと?
坂本:〝面倒なことに巻き込まれたくない〟というか。困っている人がいたとしても、声をかけて面倒なことに巻込まれたらどうしようとか思って、躊躇してしまうことはあります。なんか都会に染まってきた感じで、自分でも嫌ですけど。
 
━━反対に、東京にはあるけれど、函館にはないなと感じるモノやコトはありますか?
坂本:東京には〝寛容さ〟があると思います。例えば、うちの親なんかは、世間体というか、「こうでなければいけない」みたいな意識がすごく強いんですよ。私も近所の人に「沙也加 ちゃんは今何してるの?」って聞かれて、「横浜で看護大学生してます」と答えると、「えっ? 函館の看護学校に行けばいいのに、なんでわざわざ横浜の大学に?」みたいに言われることがあります。「わざわざお金をかけて遠くまで行って、同じ資格を取るの? なんで?」って。
函館は、そういう「こうでなければいけない」意識が強いと感じます。それから外れてると、もはや異質なもとのして取り扱われるというか。東京だと「そういう考えかたもあるんだな」と、もっと寛容に受け止められるような気がします。
 
━━そういった2つの街の良し悪しを踏まえ、今後、函館に帰ろうという気持ちはありますか?
坂本:結婚したり、子どもができたりとかしたら帰るかもしれないですね。うちの場合は、お姉ちゃんも東京に出てきているんですけど、きっと函館に帰るつもりはないだろうから、そうなると親のことも心配ですし。
でも、今のところは海外で看護師をしたいと思っているので、しばらくは故郷と親元を離れて頑張ろうと思っています。

MY FAVORITE SPOT

 
八幡坂

「高校の時に、よく自転車で行ってました!古着屋さん巡りが楽しかったです!」

 
トロイカ

「石川町にあるケーキ屋さん。帰ったら絶対いくようにしてます。シュークリームがおいしいですよ!やさしい味がします。」

 
函館から八雲方面に行く
途中の道

「おばあちゃんが八雲にいて、そこに行く時に通るんです。海と空以外に何もない風景が好きです。」