嘘のような本当の物語を実現させた
好奇心に直結した行動力と、徹底的に考え抜くという姿勢

苧坂 香生里 さん(37)
 職業:webデザイナー
出身地:兵庫
現住所:函館
 兵庫→大阪→京都→東京→函館

 
 
 
Webデザイナー、パン屋の女将さん、2児の母、『箱バル不動産』のメンバーと、いくつもの草鞋を履きながら函館・元町で暮らす苧坂香生里さん。京都や東京など、日本を象徴する都市のほか、パリや福岡県の糸島などで「自分達が楽しく暮らせる場所」を探す中、最終的に落ち着いたのが〝世界で一番カッコ良い街〟と思えた函館でした。
「自分が納得いくまで、徹底的に考える」という苧坂さんに、〝寄り道しながらゴールを目指す〟というデザイン哲学や、「古民家をもらって、カフェをオープンさせた」という嘘のような本当の話、便利さや安さよりも大切にしている〝街の循環に繋がる消費活動〟などについて伺いました。

 
取材・文章:阿部 光平、撮影:妹尾 佳、イラスト:阿部 麻美 公開日:2016年11月23日

 
 

 
 
 
 
 

〝寄り道しながらゴールを目指す〟というデザイン哲学

 
━━はじめに現在のお仕事について教えて下さい。
苧坂:Webのデザイナーをしています。ホームページの制作が中心なんですけど、考え方としてはロゴデザインから入ることを意識しています。
何かをする上で、ロゴって屋号みたいなものじゃないですか。自分の名前みたいなものだし、ずっと使うものだから、大事にしないといけないと思っていて。そこを掘り下げていくことで、やりたいことの本質が見えてくるし、ホームページに必要なものも見えてくると思うので。だから、ロゴとWebというのを、できるだけ一緒に作っていきたいなと思っています。
 
━━なるほど。ホームページ制作の依頼に対して、まずヒアリングからスタートして、どういうことをしたいという話の中で、最初にロゴデザインを提案していくと。 
苧坂:そうですね。普通よりは時間がかかっちゃうんですけど、時間と手間がかかっても、そういうところから始めていきたいなと。そういう想いから、ジグザグ社という名前をつけました。
 
━━最初から真っ直ぐ進むんじゃなくて、あっちに行ったりこっちに行ったりと悩みながら、一緒にゴールへ向かうというイメージなんですね。 
苧坂:そうなんです、はい。 
 
━━効率を優先していたら、できない仕事の仕方ですね。デザイナーという枠に留まっていないというか、やりたいことの本質やブランディングの話にまで付き合いながらホームページ制作を進めていくと。
苧坂:最初から一緒に話を掘り下げていくっていうスタンスです。ちょっと面倒くさいくらい(笑)。会社名を考えるところから一緒に進めていった案件もありました。 
 
━━それは本当にイチからのお付き合いですね! 
苧坂:Webのデザインって、いくらでも妄想を広げることができるんですよね。早いし、自由度が超高い!そういうところが楽しいですね。
 
 

 

 
 
 
━━デザイナーとして仕事をする一方で、苧坂さんは『箱バル不動産』のメンバーとしても活動されていますが、こちらはどのような経緯で始められたのでしょうか?
苧坂:元々は『tombolo』という主人のパン屋を手伝いながら、デザインをやっていたんですけど、そこに箱バルメンバーの蒲生君と富樫さんがやって来て、それこそ名前を考えるところから一緒にやってほしいという話があったんです。
それが、7月のことで、9月のバル街には『函館移住計画』を実施したいんだって話で。「それ、今から一年くらい前には相談に来てないとおかしいでしょ!」って言って、最初は突き返したんですよ(笑)。だけど、どうしても9月に実施したいという気持ちは変わらないらしくて、デザインとか付き合ってほしいという話になり、「じゃあ、本気で考えよう」ってことで始めたんです。それで、みんなと夜な夜なLINEで意見交換するようになって、結局デザイン担当みたいなポジションになってました(笑)。
 
━━やってるうちにそれぞれの役割が見えてきたんですね。
苧坂:そうなんですよ。箱バルのホームページも、すごく大変そうだから、最初はやりたくなかったんですけど(笑)。
 
━━時間や手間のかかる仕事が好きだって言ってたじゃないですか(笑)!
苧坂:そうなんですけど、めちゃくちゃ大変そうだなって思って(笑)。「街と箱、箱と人を心で紡ぐ」っていうテーマを掲げているんですけど、それをひとつのサイトに表現して、その上で不動産の賃貸や売買の情報も載せるっていうのが全然想像できなくて。絶対にホームページが必要なことってわかってたんですけど、なんか、「私がやる」って言いたくなくて(笑)。
結局ホームページを作るのは、11月から始まって、4月末にオープンになったんですけど、けっこう揉めましたね。ようやくできたと思ったら、白紙に戻るみたいなこともあって。なんていうか、諦めないんですよね、4人とも。だから、なんとか最後までやれたのかなっていう気もするんですけど。
結局、私も面倒くさいのは好きなので。いや、好きじゃないんですけど、面倒くさくなっちゃうっていうか。面倒くさくしちゃうんですよね、いつも。納得いくまで、とことんディスカッションするから。
 
━━そうやって、徹底的に話し合いができるというのは良いチームですね。
苧坂:今年は、『PALM WINE STORE』の妹尾君と一緒に『HAKOMAP』というのを作ったんですよ。あれも、元々やりたかったことなんですけど、自分達だけでやるには大変だろうなと思っていて。だけど、妹尾君が一緒にやろうって言ってくれたから、ちょっと無理してバル街に合わせて作ったんです。スケジュール的にはギリギリだったんですけど。
そうやって、ちょっとずつ、サポートメンバーというか、理解してくれる人達が増えていくのは嬉しいなと思ってて。だからもっと、自分が成長しないといけないなって感じています。

 
 
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